2020/05/26 |
人間で候補化合物のスクリーニングができれば効率的かもしれませんが、現実的には不可能です。哺乳類であるマウスで調べても人間に効かないことがあります。さらに、哺乳類ですと動物愛護の観点でも最近は厳しい時代になってきています。
そのような状況も踏まえると、ゼブラは使いやすいモデル生物です。ただマウスもしかりですが、ゼブラにしても万能なわけではありません。例えば、ゼブラではほとんどの臓器を得られるものの肺や前立腺は得られませんし、心臓は一心房一心室です。ですが一方で人間の
向精神薬がきれいにスクリーニングできます。魚なのに、人間の精神的な疾患の治療薬研究に使うことができるのです。
例えば先天性の非常に重症なてんかんがありますが、これに関係する遺伝子は人間と同じです。これをゼブラでノックアウトするとてんかんを再現できますので、数万匹で化合物をスクリーニングできます。
これまで治療薬がなかった疾患でも、ある日突然、ゼブラで見つけることができるかもしれません。究極的には人間と同じでなければダメなのでは?という考えになるわけですが、あくまでスクリーニングのためのツールであり、メディカルニーズのどこに使えるかをフォーカスし、目的のために利点を最大限に生かすという観点で、実用化を目指しています。
さらに患者ガン移植ゼブラフィッシュモデル等のように、数多くのヒト化ゼブラフィッシュモデルが開発されています。
生体レベルでのフェノタイプアッセイがあまり着目されてきていなかったのでそこを補完していくかたちですが、ジェノタイプアッセイや従来のオミクスと対立する考えではなく、相
互に補完することは分かっているので、今まで弱かったところを補うということです。そのほうが臨床的な有効性にさらに近づけると考えています。
各種マルチオミクスは多くの情報がビッグデータ化していますが、それに対応するフェノタイプアッセイが、数や密度の点でマウスではまだ未成熟です。従ってサイエンスという観点でも、ゼブラフィッシュのフェノームビッグデータ化による補完は重要だと感じています。