2018/01/05 |
肝・膵がんは、がん死亡率順位が上位であり、治療薬応答性が極めて低く予後が悪い
固形がんである。
現在、術後幾つかの抗癌剤の併用療法がガイドラインに記載されているが、
充分な予後改善やオミクス個別化医療は、実現していないのが現状である。
ゲノム、トランスクリプトーム、プロテオーム、メタボロームなどのオミクスは、
近年解析技術の著しい発展に伴い個別化医療への応用が試みられてきたが、
その治療薬応答性予測能を向上させるためには、
多数の症例による大規模臨床研究の統計的解析が不可欠である。
一方、個々の患者肝・膵がん検体のex vivoフェノミクス(肝・膵がん治療薬感受性)解析情報は、臨床治療薬応答性との関連がより直接的であり、
術後その患者の治療薬と用量の決定支援となり、
多数の他症例における情報は不要である。
しかしながら、現在までは高度免疫不全マウスによる臨床移植癌の技術的な限界や高コスト(1症例$25,500)からフェノミクス個別化医療は実現してこなかった。
従来より、日本膵臓学会膵癌取扱い規約検討委員会委員長伊佐地教授との全面的共同研究を基盤に、新しい臨床検体移植モデルとして定量的ゼブラフィッシュin vivoイメージングシステムを独自に構築し、臨床肝・膵がん検体の治療薬感受性を100時間以内に解析し、次世代直接フェノミクス個別化医療を実現する体外診断用医薬品を開発しております。
ヒト肝・膵がん移植in vivoイメージングシステムは、ヒトがん移植がほぼ100%可能な免疫系が未熟な受精後36時間以内の正常ゼブラフィッシュを用いるもので、独自の移植プロトコルにより治療薬感受性を定量的に解析することができ、既に前臨床創薬ツールとして実用化しており、2016年度には臨床膵がん治療薬感受性の体外診断薬実用化に向けてのPOCを取得しております。 すなわち、臨床膵がん細胞100個を、各ゼブラフィッシュに移植することにより、48時間でex vivo治療薬感受性を定量化することを可能にし、限られた臨床膵がん細胞検体により多数の候補抗癌剤の複数濃度における治療薬感受性を解析可能とすることを2016年度に確立しました。
本研究ではこれまでの前臨床研究および少数例臨床膵がんにおける技術的成果や解析のスループットをさらに改善し、この成果を膵がんをより多数例にすることや他の予後の悪い悪性腫瘍全てに展開し、治療薬感受性解析の定量性や精度を向上させ、臨床がん検体の治療薬感受性試験の有効性を確立し、体外診断用薬品としての実用化を目指しています。
その結果、新しいフェノミクス精密医療(Precision Medicine)を実現し、臨床がんの生命予後を明確に改善する新規治療薬を探索します。