2019/02/08 |
シンポジウム3:がんと心脈管作動物質との新たな接点
第48回日本心脈管作動物質学会
富山国際会議場
腫瘍血管新生とプレシジョンメディシン
田中利男1)2)、島田康人3)、西村有平3)
1)三重大学大学院医学系研究科システムズ薬理学
2)三重大学メディカルゼブラフィッシュ研究センター
3)三重大学大学院医学系研究科統合薬理学
米国NCI(NIH)が、1990年から継続してきた60種類のがん細胞培
養による抗がん剤スクリーニングを2016年に中止し、患者がん移植マウス
モデルにシフトしてから(Nature 530,391,2016)、国際
的に患者がん移植マウスモデルががん研究の中心となり急激に展開し、臨床的有用性が明らかにされている。しかしながら、この高度免疫不全マウスによる患者がん移植は、1匹のマウスに約10万個のがん細胞が必要であり、複数の治療薬の感受性解析が可能となるまでに時間やコストがかかり過ぎることや腫瘍血管新生解析のスループットを上げることが困難であり課題が残されている。
一方、患者がん移植ゼブラフィッシュモデルの場合、1匹のゼブラフィッシュに患者がん細胞が100個で十分であり、1症例に200匹以上の移植が可能で、複数の抗がん剤感受性解析が実現し、透明ゼブラフィッシュ(MieKomachi003)により腫瘍増殖のみではなく腫瘍血管新生や遠隔転移などの定量的解析が、手術後100時間以内に可能となる。これらのことから、患者がん移植ゼブラフィッシュモデルは、患者がん移植マウスモデルと比較して、スピードとスループットとコストに優れており、今後のプレシジョンメディシン(精密医療)におけるコアテクノロジーとなると思われる。すなわち、患者がん移植ゼブラフィッシュモデルの場合、免疫機構が未成熟な受精後36時間以内に、患者がん細胞を正常ゼブラフィッシュに移植するため、腫瘍増殖、腫瘍血管新生、転移に対する治療薬感受性を定量的に解析することが可能となった。そこで我々は、ヒトがん移植ゼブラフィッシュモデルにより新しいヒト腫瘍血管新生遺伝子ZMYND8を見出し、臨床病態における役割を検討した。
さらに、膵がん治療薬感受性解析による臨床治療薬応答性予測を明らかにし、体外診断薬の実用化に向けて解析したので、報告する。