2019/06/26 |
第46回日本毒性学会学術年会
シンポジウム
医薬品の代替法によるヒト胎児毒性リスク評価戦略の最先端
2019年6月26日(水)14:30ー16:30
ゼブラフィッシュによる発生毒性試験とヒトへの外挿性
Clinical Implication of Zebrafish-Based Developmental Toxicology
田中 利男(たなか としお) / Toshio TANAKA
三重大学大学院医学系研究科システムズ薬理学(Department of Systems Pharmacology, Mie University Graduate School of Medicine)、三重大学メディカルゼブラフィッシュ研究センター(Mie University Medical Zebrafish Research Center)
動物愛護の観点からなるべく実験動物を使用しない方法に置き換え(Replacement),使用動物数を削減し(Reduction),実験動物に与える苦痛を少なくする(Refinement)という3R の原則が求められています。動物実験代替法としてのin vitro 試験は動物愛護に寄与し,多数の被験物質をハイスループットに評価でき,感度が高い,再現性が良いといった利点が認められます。しかしながらin vitro試験法の限界が認められ、in vivo動物実験が不可欠な分野が多くあることが明らかとなりました。この課題に対応するモデル動物としてのゼブラフィッシュが、脊椎動物として哺乳類やヒトとのゲノム相同性が高いこと、多産性や飼育管理が容易であり、体外受精であり臓器形成が驚くべき速さで完成することなど多くの優越性が認められ、まず国際的にも発生毒性試験に使用されております。そこで代替法としてのゼブラフィッシュによる発生毒性試験の特色、特にヒトへの外挿性における特徴について報告します。まずヒト疾患関連遺伝子におけるゲノム相同性は82%あり、最近急激に発展しているCRISPRsなどのゲノム編集が最もよく応用されているモデル生物の一つであります。その結果、発生毒性機構のハイスループットな解析が可能となり、今後のヒトにおける発生毒性学の中心的な基盤情報を提供しています。特に、最近報告された(Science2018;360:6392)正常発生プロセスにおけるゼブラフィッシュ全単一細胞トランスクリプトームの包括的研究が、今後のゼブラフィッシュ発生毒性試験のヒトへの外挿性を強化すると思われます。すなわち、ヒトとゼブラフィッシュの発生毒性におけるフェノームの類似性だけではなく、トランスクリプトームにおける相同性により、ゼブラフィッシュ発生毒性試験は、次世代の研究プロトコルへ発展しております。