2019/07/19 |
21世紀に本格的ゲノム創薬時代へ突入してから、現在もなお治療が困難なアンメットメディカルニーズの高い疾患に対する画期的治療薬(First-in-Class)開発は、依然として困難を極めている。具体的には、2008年から2010年における世界の臨床試験第二相試験の成功率はわずか18%であり、国際的に最も深刻な問題として受け止められている。これら失敗原因の多くが、不十分な臨床的薬効であることから、従来のゲノム創薬におけるリバース薬理学がその役割を果たしきれていないことが、特に問題視されるようになった。
新薬開発における危機的状況に対して米国NIHが、この困難性に対する研究戦略イノベーションとして2011年10月に、定量的システムズ薬理学(Quantitative and Systems Pharmacology)白書を報告し、世界にインパクトを与えた。この白書によれば、定量的システムズ薬理学とは、薬理学、ゲノム医学、情報科学が統合されたもので、多くの革新的挑戦を挙げており、中でも新しい挑戦的創薬ツールとして、ゼブラフィッシュやiPS細胞などが提案されている。ゼブラフィッシュ創薬は、脊椎動物のin vivoハイスループットスクリーニングを初めて創薬プロセスに提供しており、グローバルな創薬戦略にインパクトを与え、明白なパラダイムシフトが実現してきている。一方、1999年−2008年において米国FDAに認可された新薬を解析すると、興味深いことに62%の画期的新薬(First-in-Class)は、フェノタイプスクリーニング により見出され確立していることが明らかとなった。その結果、現状のターゲットベースなリバース薬理学の限界を克服するために定量的in vivoフェノタイプスクリーニングが注目されることとなり、生体レベルでのフェノタイプやメカニズムの定量的ハイスループットスクリーニングが可能なゼブラフィッシュへの期待が大きくなっている。