2019/08/27 |
現在世界では高度免疫不全マウスによる患者がん移植
モデル(PDX mouse model)が圧倒的に活用されてい
るが,いくつかの課題があり,正常免疫であるゼブラ
フィッシュによる新しい患者がん移植モデル動物(PDX
zebrafish model)への展開を,我々は挑戦している.す
なわち高度免疫不全マウスと比較して,ゼブラフィッ
シュへの患者がん移植の圧倒的な生着率や生着スピード
が,免疫システムの未熟な受精後36時間以内に移植すれ
ば速いこと,移植に必要なヒトがん細胞が100個以下で
あり,2日間で薬効が定量解析できるなどの利点から,
我々をはじめ世界で患者がん検体のゼブラフィッシュ移
植モデルが確立されている(図1,表1).これらヒト
臨床がん細胞のゼブラフィッシュ移植システム(PDX
zebrafish model)は,PDX mouse modelより圧倒的に
迅速な治療薬感受性試験が実現しており,抗がん剤選択
のための臨床体外診断システムとして,次世代個別化
医療ツールになることを明らかにしている(図2).従
来の個別化医療は,遺伝子多型や変異(ゲノム),遺伝
子発現レベル(トランスクリプトーム),プロテオーム,
メタボロームなどのオミクスを基盤とした大規模集団統
計学の予測により構築されようとしてきた.一方,臨床
がん検体移植ゼブラフィッシュによる個別化医療は,各
患者がん検体のフェノミクス解析結果をその患者の治療
薬選択にリアルタイムで活用することができ,真の次
世代プレシジョンメディシンであるといえよう.