2019/08/27 |
21世紀に本格的ゲノム創薬時代へ突入してから,現在
もなお治療が困難なアンメットメディカルニーズの高
い疾患に対する画期的治療薬(First-in-Class)開発は,
依然として困難を極めている.具体的には,2008年から
2010年における世界の臨床試験第二相試験の成功率はわ
ずか18%であり,国際的に最も深刻な問題として受け止
められている.これら失敗原因の多くが,不十分な臨床
的薬効であることから,従来のゲノム創薬におけるリ
バース薬理学がその役割を果たしきれていないことが,
特に問題視されるようになった(5).
新薬開発における危機的状況に対して米国NIHが,こ
の困難性に対する研究戦略イノベーションとして2011
年10月に,定量的システムズ薬理学(Quantitative and
Systems Pharmacology)白書を報告し,世界にインパ
クトを与えた(6).この白書によれば,定量的システムズ
薬理学とは,薬理学,ゲノム医学,情報科学が統合され
たもので,多くの革新的挑戦を挙げており,中でも新し
い挑戦的創薬ツールとして,ゼブラフィッシュやiPS細
胞などが提案されている.ゼブラフィッシュ創薬は,脊
椎動物のin vivoハイスループットスクリーニングを初め
て創薬プロセスに提供しており,グローバルな創薬戦略
にインパクトを与え,明白なパラダイムシフトが実現し
てきている(7).一方,1999年−2008年において米国FDA
に認可された新薬を解析すると,興味深いことに62%の
画期的新薬(First-in-Class)は,フェノタイプスクリー
ニング により見出され確立していることが明らかとなっ
た(8).その結果,現状のターゲットベースなリバース薬
理学の限界を克服するために定量的in vivoフェノタイプ
スクリーニングが注目されることとなり,生体レベルで
のフェノタイプやメカニズムの定量的ハイスループット
スクリーニングが可能なゼブラフィッシュへの期待が大
きくなっている。.