2022/12/05 |
新規医薬品開発の成功率の低さは、現在国際的にも深刻な問題として、繰り返し報告されている1-3)。すなわち1000億円以上を10年間以上投資しても、必ずしも新規医薬品開発が成功するとは限らない現状の問題点がいくつか指摘され、それらを克服するために、多くの研究開発戦略が提案されている。しかしながら、その課題は現在なお数多く残されており、最も重要なものは創薬ターゲットバリデーションであることは、世界の共通認識であると思われる。
臨床開発における失敗は、第2相や第3相で認められ、創薬プロセスにおいて特にコストが高い臨床開発における失敗は、ビジネスモデルとして深刻な問題として理解されている1-3)。この創薬臨床開発における困難性に対する対策については、まず臨床開発失敗原因に焦点を当て、その克服に向けて多くの努力がなされてきた。例えば2008年-2015年にける臨床開発失敗の最大の理由は、期待されていた臨床的有効性が不十分であることが、失敗全体の52%を占めている1)。第二の臨床開発失敗原因が安全性問題であり24%であることから、第一原因である臨床的有効性欠乏は、2倍以上の理由となり、突出した最大の課題であることは、現在の厳しい国際的状況である。さらに驚くべきことは、この最大の臨床開発失敗原因である臨床的有効性不足は、2008年-2015年の8年間にほぼ改善していないことが明らかである1)。すなわち、創薬ターゲットの選択が不適切であり、最近の目覚ましいシステムズ薬理学の発展による治療薬の最適化テクノロジーが、貢献できていないことを明確に示している。すなわち、伝統的な医薬品研究開発プロセスのスタート点のターゲットバリデーションにおける不適切な創薬ターゲット選択とバリデーションプロセス不足が、臨床開発失敗の真の原因であり、この間の長い創薬プロセスにおける技術革新が、現時点ではこの課題を克服できていないと思われる。そこで本稿では、抗体医薬品開発においても、その成否を決める最重要プロセスであるターゲットバリデーションに焦点を絞り、その問題点を克服するためのグローバルな技術革新について総括し、それでもなお未解決な課題に対する次世代ターゲットバリデーションについても報告する。