2024/05/01 |
新しいハイスループット個別ゼブラフィッシュ腎毒性スクリーニングシステムの創生と応用
野本毅1,2、清水陽嘉1,2、寺見文宏1,2、森葵泉1,2、松岡さおり1,2、櫛田友紀1,2、西野加奈子1,2、○田中利男1,2
1三重大学大学院医学系研究科システムズ薬理学
2三重大学メディカルゼブラフィッシュ研究センター
ゼブラフィッシュは、世界で腎毒性スクリーニングに広範に活用されています。その理由は、ヒト病態ゲノムと84%の相同性が認められ毒性機構におけるヒトとの類似性が示唆されることや全身の透明性により腎形態学や腎機能を直接解析できることなどによります。さらに、多産系であることや臓器形成スピードが早いことなどin vivo腎毒性ハイスループットスクリーニングへの適合性が最も高い脊椎動物であることが注目されています。当初ゼブラフィッシュ腎毒性スクリーニングは、形態学的観察やクレアチニン、尿素窒素などの血液検査を用いて腎毒性を評価していました。しかし、これらの方法は感度が低く、早期診断には不十分でありました。そこで、1種類の分子量の蛍光ラベルデキストランを静注して、腎毒性蛋白尿定量に応用することになりました。この場合、内因性タンパク質ではないことや分子量が1種類であることからいくつかの課題を残しました。そこで、内因性血漿蛋白質(1/2vdbp-mCherry:50kDa, NL-D3:35.5kDa)のトランスジェニックゼブラフィッシュによる腎毒性蛋白尿定量が、報告されました。しかしながら、これらの場合も1種類の分子量であり、腎毒性における糸球体機能と尿細管機能を識別できないことが課題として残されました。そこで我々は、2013年(ACS Chem Neurosci.4:1183-93)に、ゼブラフィッシュ飼育水に添加することにより速やかに全ての分子量の血漿蛋白質にin vivoで結合する新規蛍光色素ZMB741を独自開発し、圧倒的な優越性を持つ非侵襲性ゼブラフィッシュ個別in vivo腎毒性蛋白尿定量プロトコルを構築しました。その結果、腎毒性の糸球体障害と尿再細管障害を識別できる全く新しい原理によるin vivoハイスループット腎毒性スクリーニングシステムを創生しましたので、報告します。