2024/06/11 |
最近、我々はin vivo 血漿蛋白蛍光色素ZMB741による蛋白尿定量スクリーニングシステムを、ACSjournal:Chemical & Biomedical Imagingに報告した。
https://pubs.acs.org/doi/10.1021/cbmi.4c00029
ACSjournal:Chemical & Biomedical Imaging,In Vivo Assessment of Individual and Total Proteinuria in Zebrafish Larvae Using the Solvatochromic Compound ZMB741
Tsuyoshi Nomoto, Aoi Mori, Kayoko Yamada, Fumihiro Terami, Akiyoshi Shimizu, and Toshio Tanaka*
今後は、以下の広範なゼブラフィッシュ蛋白尿病態モデルに、この高感度ハイスループット蛋白尿定量スクリーニングを、活用できると思われる。
原発性糸球体腎炎:最も頻度の高い腎疾患の一つであり、自己免疫反応や遺伝的要因などが原因で起こると考えられています。糸球体と呼ばれる微細な血管の炎症や損傷により、蛋白尿をはじめとした様々な症状が現れます。
発症頻度:比較的高い
病因メカニズム:
自己免疫反応
遺伝的要因
感染症
薬剤
病態特徴:
蛋白尿
血尿
浮腫
高血圧
腎機能低下
蛋白尿出現機構:
糸球体基底膜の透過性亢進
糸球体内皮細胞の機能障害
糸球体間隙の拡張
糖尿病性腎症:糖尿病の慢性合併症の一つであり、長期間の高血糖状態が原因で起こります。糸球体や腎小管の微細血管が損傷を受け、蛋白尿や腎機能低下を引き起こします。
発症頻度:糖尿病患者のうち、20?30%
病因メカニズム:
高血糖による高浸透圧ストレス
糖尿病性代謝異常による糸球体・腎小管の微細血管障害
炎症反応
病態特徴:
蛋白尿
血尿
浮腫
高血圧
腎機能低下
網膜症
神経症
蛋白尿出現機構:
糸球体基底膜の透過性亢進
糸球体内皮細胞の機能障害
糸球体間隙の拡張
腎硬変:高血圧や糖尿病などの慢性腎疾患が進行し、腎臓全体の組織が硬化・萎縮する病態です。糸球体や腎小管の機能が低下し、蛋白尿や腎機能低下を引き起こします。
発症頻度:慢性腎疾患患者のうち、10?20%
病因メカニズム:
高血圧
糖尿病
糸球体腎炎
腎血管性腎症
慢性腎盂腎炎
腎障害性薬剤性腎症
病態特徴:
蛋白尿
血尿
浮腫
高血圧
腎機能低下
貧血
骨粗鬆症
心不全
蛋白尿出現機構:
糸球体基底膜の透過性亢進
糸球体内皮細胞の機能障害
糸球体間隙の拡張
腎小管間質の線維化
腎血管性腎症:腎臓への血流が障害されることで起こる腎疾患です。腎動脈狭窄、腎塞栓症などが原因で起こります。腎機能低下や蛋白尿を引き起こします。
発症頻度:比較的低い
病因メカニズム:
腎動脈狭窄
腎塞栓症
腎動脈瘤
腎静脈血栓症
病態特徴:
蛋白尿
血尿
急性または慢性腎機能低下
高血圧
側腹部痛
laminin 5α (lam5α):糸球体基底膜の主要構成成分であるラミニン5αをKO/KDすることで、糸球体基底膜構造異常と蛋白尿を誘発します。
nidogen 1 (nid1):糸球体基底膜の主要構成成分であるニドゲン1をKO/KDすることで、糸球体基底膜構造異常と蛋白尿を誘発します。
collagen 4α3 (col4α3):糸球体基底膜の主要構成成分であるコラーゲン4α3をKO/KDすることで、糸球体基底膜構造異常と蛋白尿を誘発します。
蛋白尿出現機構:
糸球体基底膜の透過性亢進
病態特徴:
蛋白尿
腎機能低下
糸球体基底膜構造異常
文献:
Lam5α Deficiency Induces Glomerular Basement Membrane Disruption and Proteinuria in Zebrafish
Nidogen 1 Deficiency Induces Glomerular Basement Membrane Disruption and Proteinuria in Zebrafish
Collagen 4α3 Deficiency Induces Glomerular Basement Membrane Disruption and Proteinuria in Zebrafish
糸球体細胞関連遺伝子KO・KDモデル
遺伝子標的:
podocyte-specific LIM protein 1 (podocin):足細胞に特異的に発現するLIMタンパク質であるPodocinをKO/KDすることで、足細胞機能障害と蛋白尿を誘発します。
nephrin:足細胞と基底膜の間で接着分子として機能するNephrinをKO/KDすることで、足細胞機能障害と蛋白尿を誘発します。
wilms tumor 1 (wt1):糸球体細胞の分化・機能に重要な役割を果たす転写因子であるWt1をKO/KDすることで、糸球体細胞機能障害と蛋白尿を誘発します。