| 2025/12/02 |
この試験の核心は、**「患者さんのがん細胞をゼブラフィッシュに移植し、その魚に抗がん剤を投与することで、どの薬がその患者さんに効くかを事前に予測できるか?」**を検証することです。
1. 主要な成果:高い予測精度の実証
最新の研究成果(Cancers 誌、Journal of Personalized Medicine 誌等で発表)により、この手法(zPDX法)が患者の治療予後を予測する強力なツールになり得ることが示されました。
「効く」か「効かない」かの予測: ゼブラフィッシュモデルで「薬剤に反応しなかった(ノンレスポンダー)」と判定されたグループは、実際の患者さんにおいても再発率が有意に高いことが確認されました。
魚で効果なしだった群の患者再発率: 約 66.7%
魚で効果ありだった群の患者再発率: 約 14.3%
結論: ゼブラフィッシュでの薬効評価は、実際のヒトの臨床結果(1年以内の再発リスクや無病生存期間)と高い相関関係があることが統計的に示されました。
2. この試験の意義とメリット
通常、マウスを用いた移植モデル(PDX)は結果が出るのに数ヶ月かかりますが、XenoZ(ゼブラフィッシュ)試験では以下の点が画期的とされています。
スピード: 移植から結果判定まで数日〜1週間程度で済みます。
臨床への応用: 手術後、補助化学療法を開始するまでの短い期間に「どの抗がん剤を使うべきか」という意思決定支援に使える可能性があります。
対象がん種: 主に膵臓がん(PDAC)や消化器系のがんで検証が進められていますが、結腸直腸がんなど他のがん種への応用も研究されています。
試験の基本情報(ご参考)
試験名: XenoZ (Zebrafish Patient-Derived Xenograft Clinical Trial)
NCT番号: NCT03668418
目的: 固形がん患者における化学療法応答予測のためのゼブラフィッシュアバター(zPDX)の検証
アプローチ: コ・クリニカル試験(患者さんの治療と並行して、その患者さんの「アバター(分身)」である魚で薬効を試す試験)
今後の展望
この試験結果を受け、現在は「実際にこの手法を使って治療薬を選択する」ためのさらなる検証や、システムの実用化(AIDXプレシジョン医療としての展開など)に向けた動きが加速しています。日本国内のバイオ関連セミナー等でも、次世代の創薬・個別化医療プラットフォームとして注目され始めています。