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PDXZ移植部位Perivitelline Space(PVS)卵黄嚢の特徴

PDXゼブラフィッシュシステム(PDXZ)において、局所での腫瘍増殖アッセイや薬剤スクリーニングを行う上で、Perivitelline Space(PVS)卵黄嚢が最も標準的かつ確実な部位です。

なぜ卵黄嚢 (Yolk Sac) が最適なのか?
卵黄嚢が「局所増殖モデル」に最適である理由は、その解剖学的な特徴と生理学的な環境が、がん細胞をその場に留め、増殖させるのに理想的だからです。

1. 解剖学的・生理学的な特徴
血管系から隔離されている (Avascular) これが最大の理由です。卵黄嚢(正確には卵黄を包む膜と胚本体の間にある空間、PVS)は、受精後数日の幼生において、主要な循環血流(血管網)から隔離されています。

結果: この部位に移植されたがん細胞は、キュビエ管のように血流に乗って全身に散らばることがありません。物理的に「閉じ込められた」状態になります。

豊富な栄養源 卵黄(Yolk)は、ゼブラフィッシュの胚が発生・成長するために必要な栄養(脂質、タンパク質など)が凝縮された貯蔵庫です。

結果: 移植されたがん細胞は、この豊富な栄養を利用して、宿主(ゼブラフィッシュ)の組織と競合することなく、**移植局所で効率よく「成着」し、「増殖」**することができます。

免疫応答が比較的弱い(免疫寛容的) 卵黄嚢は、胚本体の組織と比較して、マクロファージなどの自然免疫細胞の浸潤が少ない、あるいは遅い「免疫特権(Immune-privileged)」的な空間であると考えられています。

結果: ヒト由来のがん細胞が「異物」として拒絶・攻撃されるリスクが低減され、生着率が向上します。

物理的な空間 卵黄嚢の空間は、ゼラチン状の物質で満たされており、細胞が塊(スフェロイドやクラスター)を形成し、3次元的に増殖するための「足場」として機能します。

2. 薬効定量(薬剤評価)における確実性
卵黄嚢モデルは、薬剤の効果を定量化する上で非常に優れています。

理由 1: 観察・定量が容易 ゼブラフィッシュの胚は透明であり、特に卵黄嚢は内部組織の影響を受けにくいため、蛍光標識されたがん細胞の塊(腫瘍マス)を非常にクリアに観察できます。

理由 2: 再現性の高いデータ 「全身に散らばった細胞」の総数を数えるのは複雑ですが、「局所に固まった一つの腫瘍マス」の大きさ(面積や蛍光強度)を測定するのは非常に単純かつ正確です。

具体的な薬効評価の方法:

がん細胞を卵黄嚢に移植し、腫瘍マスを形成させます。

ゼブラフィッシュを飼育する水(培養液)に、評価したい抗がん剤(薬剤A)を加えます。

対照群(薬剤なし)と比較して、薬剤Aを与えた群の腫瘍マスがどの程度縮小したか、あるいは増殖がどの程度抑制されたかを、顕微鏡画像で経時的に測定します。

これにより、「薬剤Aには、この患者さんのがんを縮小させる効果がある」と判断できます。

結論
PDXゼブラフィッシュモデルにおいて、

血行性転移能(全身に広がる力)を見たい場合 → キュビエ管 (Cuvier's duct)

局所での増殖能や薬剤への反応(腫瘍が小さくなるか)を確実に見たい場合 → 卵黄嚢 (Yolk Sac)

が、それぞれ最適な移植部位として確立されています。

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関連リンク

  • 三重大学大学院医学系研究科システムズ薬理学
  • 三重大学メディカルゼブラフィッシュ研究センター

関連ファイル

  • AI プレシジョン患者がん移植ゼブラフィッシュシステムのプロトコル開発
  • AI Precision Patient-Derived Cancer Xenograft Zebrafish System(PDXZ)