2010/12/03 |
第31回日本臨床薬理学会年会が2010年12月1日ー3日、国立京都国際会館で開催されますが、シンポジウム15指定演題(薬理学会と共催、メインホール、2010年12月3日10:00-12:00)「分子標的薬とゲノムバイオマーカー」において、報告します。当日会場へのご参加を,お待ちしております。
「オミックス創薬科学とターゲットバリデーション」
田中利男、西村有平、島田康人
三重大学大学院医学系研究科薬理ゲノミクス
三重大学メディカルゼブラフィッシュ研究センター
三重大学生命科学研究支援センターバイオインフォマティクス
三重大学VBLメディカルケモゲノミクス研究室
ポストゲノムシークエンス時代における分子標的薬開発は、主にリバース遺伝学と細胞レベルでのスクリーニングが広範に活用されてきた。しかし、必ずしも分子標的薬開発の成功率は向上していないとされている。そこで我々は、in vivoハイスループットスクリーニングシステムを構築し、リバース薬理学とフォーワード薬理学を統合したオミックス創薬科学を試みている。従来の哺乳類ではin vivoスクリーニングが困難であるため、脊椎動物でヒトゲノムと約80%のシンテニーがあり、すでに多数のヒト疾患モデルが存在し、多産性、全身の透明性によるin vivoイメージング、動物愛護との調和性が高いなどの特徴があるゼブラフィッシュを活用し、in vivoハイコンテンツスクリーニングおよびオミックス作用機構解析を試みている。今回は、メタボリックシンドロームモデル、心不全モデルやヒト移植癌モデルのターゲットバリデーションについて報告する。メタボリックシンドロームにおける内臓脂肪の重要性は、多くの研究成果から明らかにされているが、in vivo内臓脂肪の制御機構については、不明な点が多く残されている。そこで、独自の肥満モデルを創成し、内臓脂肪遺伝子ネットワーク解析システムを開発した。このモデルは、短期間においてBMI、血中triglyceride, 血中LDL cholesterolなどの有意な上昇や肝臓における脂肪沈着が確立されている。さらに、非侵襲的in vivo内臓脂肪イメージングシステムを開発し、同一個体における連続的定量測定を実現している。その結果、独自の食餌性肥満モデルにおいて、in vivo内臓脂肪は1週間後から有意に増加することが明らかになった。そこで内臓脂肪を分離してマイクロアレイによるトランスクリプトーム解析から、この内臓脂肪にはヒトを含む哺乳類と同様に多数の動脈硬化関連遺伝子や血栓症関連遺伝子が発現誘導しており、食餌療法によりこれらの病態関連遺伝子群が選択的に発現低下し内臓脂肪量が減少することをや、statin系医薬品により血中LDL cholesterolは有意に低下することを、明らかにしている。そこで,このモデルの内臓脂肪遺伝子ノックダウンスクリーニングから新規治療ターゲットを見出している。さらに、心不全モデルやヒト移植がんモデルにおける新しい治療遺伝子についても報告する。