2012/06/29 |
2012年6月29日に徳島市で開催された第121回日本薬理学会近畿部会にて下記の演題を発表しました。
Weighted Gene Co-expression Network Analysisを用いた医薬品の網膜毒性分子機構解析
〇山中裕貴子1)、西村有平1,2,3,4)、今鉄男1)、中村祐基1)、梅本紀子1)、張孜1)、張貝貝1)、黒柳淳哉1)、島田康人1,2,3,4)、田中利男1,2,3,4)
1)三重大学大学院医学系研究科薬理ゲノミクス、2)三重大学メディカルゼブラフィッシュ研究センター、3)三重大学新産業創成拠点オミックス医学、4)三重大学生命科学研究支援センターバイオインフォマティクス
現在臨床で使用されている治療薬や、新規に開発される化合物の中に、網膜毒性を有する薬物が存在することが知られている。例えば1993年から2006年までに開発が中止された薬物のうち、7%の薬物が網膜毒性を有していることが報告されている。従来の網膜毒性試験は少数の大動物を用いて行われてきたが、我々は小型脊椎動物であるゼブラフィッシュの網膜in vivo イメージングを可能にする蛍光色素を見出し、薬物の網膜毒性を簡便かつ高速に行うスクリーニング系を構築した(BMC Neuroscience 2010)。その結果、網膜毒性を有する複数の医薬品の同定に成功した。これらの医薬品の網膜毒性の分子機構を解明することは、既存の医薬品をより安全に使用することや、網膜毒性の少ない新規医薬品の開発に重要である。本研究では、網膜毒性を有する医薬品のひとつであるメベンダゾールの網膜毒性の分子機構を、Weighted Gene Co-expression Network Analysis(WGCNA)を用いて解析した。WGCNAはゲノムワイドな遺伝子発現プロファイルを用いて、ある遺伝子と他の遺伝子の発現パターンの類似性を、すべての発現遺伝子の組み合わせについて評価し、発現パターンの類似性を基準として遺伝子間のネットワークを抽出する手法である。したがって、既知の遺伝子機能情報を基準とするジーンオントロジー解析とは異なり、機能未知遺伝子のネットワークを構築することが可能である。メベンダゾールを曝露したゼブラフィッシュと、網膜毒性を有さないベンズイミダゾール系化合物を曝露したゼブラフィッシュの眼球を用いたDNAマイクロアレイ解析とWGCNAを用いてメベンダゾールの網膜毒性に密接に関連する可能性の高い遺伝子の抽出に成功したので報告する。