2018/02/26 |
とっとりバイオフロンティア
バイオ人材育成セミナー講演
次世代ゼブラフィッシュ創薬と個別化医療
三重大学大学院医学系研究科システムズ薬理学教授
田中 利男
現代のゲノム創薬時代においてもFirst-in-Class創薬の多くは、フェノタイプスクリーニングにより実現していることが明らかとなりました(Nat. Rev. Drug Discov. 2011, 10: 507)。一方、21世紀に発展し続けているゼブラフィッシュ創薬は、いくつかのFirst-in-Class創薬を成し遂げつつあり、その創薬戦略はオミクスを基盤とするハイスループットライブin vivoフェノタイプスクリーニングによるフェノミクス創薬であり(Nat. Rev. Drug Discov. 2015, 14: 721)、そのポテンシャルの大きさが明らかとなりつつあります。そこで最新の我々の成果と国際的展開について報告させていただきす。すなわち従来のリバース薬理学がその役割を果たしていないこと及び最近の画期的新薬開発は依然としてフェノタイプスクリーニングにより実現していることやフォワード薬理学の重要性が明白となり、このシステムズ薬理学を実現する研究開発戦略としてゼブラフィッシュ創薬が、国際的に注目されるようになりました。実際いくつかのFirst-in-Class創薬が成功しており、その創薬戦略は動物愛護管理法との調和性が高いゼブラフィッシュを基盤とするハイスループットin vivoフェノタイプスクリーニングによる薬理フェノミクスであります。我々はこのin vivoフェノミクススクリーニングの自動化、定量化、高速化、可視化などを確立しましたが、今後ヒト化ゼブラフィッシュ開発が不可欠になりつつあります。さらに、この研究戦略を臨床がん移植ゼブラフィッシュによる個別化医療やin vivoスクリーニングに展開しています。これらは各患者がん検体のex vivo治療薬感受性解析により、その患者の治療薬選択や投与用量決定を支援する真の次世代個別化医療であり、世界のがん個別化医療に大きなパラダイムシフトを実現しつつあります。これら一連のフェノミクスから前臨床in vivoスクリーニングや個別化医療を推進する次世代ゼブラフィッシュ創薬の現状とグローバル展開について、ご報告いたします。