2012/07/17 |
第39回日本毒性学会学術年会(2012年7月17-19日、仙台国際センター)にて下記の演題を発表する予定です。
新規蛍光色素を用いた血液脳関門障害の生体イメージング
In vivo imaging of blood brain barrier disruption using novel fluorescent dyes
西村有平1,2,3,4、梅本紀子1、張孜1、川端美湖1,5、張貝貝1、黒柳淳哉1、島田康人1,2,3,4、田中利男1,2,3,4
1三重大学大学院医学系研究科 薬理ゲノミクス
Department of Molecular and Cellular Pharmacology, Pharmacogenomics and Pharmacoinformatics, Mie University Graduate School of Medicine
2三重大学メディカルゼブラフィッシュ研究センター
Mie University Medical Zebrafish Research Center
3三重大学新産業創成研究拠点 オミックス医学研究室
Department of Omics Medicine, Mie University Industrial Technology Innovation Institute
4三重大学生命科学研究支援センター バイオインフォマティクス
Department of Bioinformatics, Mie University Life Science Research Center
5三重大学大学院医学系研究科 臨床麻酔部
Department of Clinical Anesthesiology, Mie University Graduate School of Medicine
血液脳関門(blood-brain barrier, BBB)は、脳の恒常性維持において極めて重要な役割を果たしており、その障害は様々な神経疾患の病態と関連することが知られている。近年、鉛や殺虫剤などの化学物質の曝露によりBBBが障害されることが報告されており、BBB障害を定量的に評価できる毒性試験法の開発は重要な研究課題のひとつとなっている。従来のin vivoにおけるBBB機能試験法では、マウスやラットに蛍光色素(フルオレッセインやエバンスブルーなど)や、標識ラベルしたタンパク質など、正常ではBBBを通過しない物質を静脈内注射し、BBBを通過して脳内に移行した蛍光色素やタンパク質を、脳切片のイメージングや、生化学的手法を用いて定量化している。これらの試験法の有用性は多くの研究により実証されているが、時間と労力を要するため多検体のスクリーニングには適していない。小型脊椎動物であるゼブラフィッシュは、モデル動物として、毒性学を含めて多くの研究分野でその有用性が世界的に認識されつつある。ゼブラフィッシュは哺乳類と同様のBBBを有しており、ゼブラフィッシュを用いたBBB機能評価を哺乳類へ外挿できる可能性が高いことが示唆されている。そこで我々は、a) 飼育水に加えるだけでゼブラフィッシュの体内に効率よく吸収され、b) 血漿アルブミンに対する高い親和性を有し血漿外への漏出が極めて少なく、c) ゼブラフィッシュの血漿を可視化するための十分な蛍光強度を有し、d) ゼブラフィッシュ体内で安定しており、長時間のイメージングが可能、などの特徴を有する蛍光色素を探索した。その結果、ゼブラフィッシュBBB障害の生体イメージングに適した蛍光色素を複数見出した。本研究で開発した新規蛍光色素を用いたBBB障害の生体イメージングは、多数の化学物質のBBBへの毒性を定量的に評価することを可能にするだけでなく、哺乳類を用いた毒性試験の削減にも貢献しうると考えられる。本研究は日本化学工業協会が推進するLRIにより支援された。