2012/12/12 |
第35回日本分子生物学会年会(2012年12月12日、福岡国際会議場)にて下記の演題を発表する予定です。
発達期の化学物質曝露による血液脳関門障害のin vivoイメージング研究
荻原智明1、西村有平1,2,3,4、張孜1、梅本紀子1、張貝貝1、黒柳淳哉1、
島田康人1,2,3,4、田中利男1,2,3,4
1三重大学大学院医学系研究科 薬理ゲノミクス
2三重大学メディカルゼブラフィッシュ研究センター
3三重大学新産業創成研究拠点 オミックス医学研究室
4三重大学生命科学研究支援センター バイオインフォマティクス
血液脳関門(blood-brain barrier, BBB)は、脳の恒常性維持において極めて重要な役割を果たしており、その機能の破綻は様々な疾患の発症と密接に関連することが知られている。近年、発達期に鉛や殺虫剤などの化学物質の曝露を受けるとBBBが障害されることが明らかとなり、化学物質の発達神経毒性のひとつとしてBBB障害を定量的に評価することの重要性が認識されつつある。現在、世界中では10万種類以上の化学物質が製造され環境中に排出されているが、これら多くの化学物質のBBBに対する毒性評価はなされていない。従来のin vivoにおけるBBB機能試験法では、マウスやラットなどのモデル動物に色素(フルオレッセインやエバンスブルーなど)や、蛍光ラベルしたデキストランなど、正常のBBBを通過しない物質を静脈内注射し、BBBを通過して脳内に移行したこれらの物質を、in vivoイメージングや、生化学的手法を用いて定量化している。これらの試験法の有用性は多くの研究により実証されているが、時間と労力を要するため多検体のスクリーニングには適していない。小型脊椎動物であるゼブラフィッシュは、哺乳類と同様のBBBを有しており、ゼブラフィッシュを用いたBBB機能評価を哺乳類へ外挿できる可能性が高いことが示唆されている。我々は、ゼブラフィッシュを用いたBBB機能評価に適した蛍光色素を同定し、この色素を用いて発達期のゼブラフィッシュBBBに対する化学物質の有害性を定量的に評価する方法を開発した。この評価系はスクリーニングレベルで実施することが可能であり、BBBに対する有害性評価が実施されていない多数の化学物質の評価に有用である。