2013/05/25 |
食餌性肥満ゼブラフィッシュを用いたエリオシトリンの抗脂肪肝作用メカニズムのシステムズ薬理学研究
○島田康人1-6、平光正典1,7、片桐孝夫7、植田智希1、張貝貝1、有吉美稚子1、梅本紀子1,3、西村有平1-6、田中利男1-6
(1三重大・院・医・薬理ゲノミクス、2三重大・メディカルゼブラフィッシュ研セ、3三重大・院・医・システムズ薬理、4三重大・生命・バイオインフォ、
5三重大・新産業創成・オミックス医、6三重大・生命・バイオインフォ、
7ポッカサッポロフード&ビバレッジ?・中央研究所)
E-mail:tanaka@doc.medic.mie-u.ac.jp
内臓脂肪型肥満・メタボリックシンドロームでは脂肪肝はほぼ必発である。近年、脂肪肝による非アルコール性脂肪肝炎や肝臓がんへの進展が重要視され、新たな治療対象として治療法・薬の開発が活発化している。我々はこれまで新規ヒト疾患モデルとして食餌性肥満ゼブラフィッシュを構築し、その表現型(内臓脂肪蓄積、耐糖能低下、脂質異常症)、ヒト臨床薬物に対する治療応答性、さらに内臓脂肪および肝臓の網羅的遺伝子発現解析を行い、病態メカニズムにおけるヒトとの外挿性を証明してきた(Oka T. et al., 2010)。またこのモデルを用いて天然資源由来成分の抗肥満作用メカニズムを明らかにしてきた(Tainaka T. et al., 2011 & Hasumura et al., 2012)。
今回、本モデルゼブラフィッシュを用いて、脂肪肝を改善する化合物エリオシトリンを発見した。さらにこの作用メカニズムを、DNAマイクロアレイを用いた網羅的遺伝子発現解析で解明したので報告する。
エリオシトリンを含有したエサを調整し(Zang L. et al., 2011で開発した技術)肥満誘導時に投与したところ、投与群では有意に体重増加を抑制し、血漿中の中性脂肪および脂肪肝を抑制した。摂食量に対しては影響を認めなかった。この肝臓からtotal RNAを抽出し、DNAマイクロアレイおよびバイオインフォマティクス解析を行ったところ、エリオシトリン投与によりミトコンドリア生合成が亢進していることが示唆された。また、エリオシトリンを投与したゼブラフィッシュでは体内ATP量が増加しており、エリオシトリンによるミトコンドリア機能が活性化されていると考えられた。
肥満者における脂肪肝と肝ミトコンドリアの機能低下はこれまで数多くの報告があり、本研究ではエリオシトリンがこの機能低下を改善することが明らかとなった。エリオシトリンはレモン等の柑橘類に多く含まれるポリフェノールであり、今後、天然資源由来成分を用いた脂肪肝治療への展開が期待される。