2013/06/18 |
ゼブラフィッシュを用いたHSP90阻害薬の網膜毒性発現機構解析
Analysis of molecular mechanism of retinopathy induced by a HSP90 inhibitor using zebrafish
西村有平1,2,3,4、梅本紀子1、張孜1、川端美湖、張貝貝1、黒柳淳哉1、島田康人1,2,3,4、山田裕一郎5、金丸千沙子5、木村和哉5、井上智彰5、千葉修一5、田中利男1,2,3,4
1三重大学大学院医学系研究科 薬理ゲノミクス
Department of Molecular and Cellular Pharmacology, Pharmacogenomics and Pharmacoinformatics, Mie University Graduate School of Medicine
2三重大学メディカルゼブラフィッシュ研究センター
Mie University Medical Zebrafish Research Center
3三重大学新産業創成研究拠点 オミックス医学研究室
Department of Omics Medicine, Mie University Industrial Technology Innovation Institute
4三重大学生命科学研究支援センター バイオインフォマティクス
Department of Bioinformatics, Mie University Life Science Research Center
5 中外製薬(株) 研究本部
Research Division, Chugai Pharmaceutical Co., Ltd.
HSP90は、癌細胞の増殖や生存に関わる様々な蛋白質の安定性および活性化に重要な役割を果たしている。そのため、HSP90は抗癌薬の重要な分子標的と考えられ、多くの製薬企業がHSP90阻害薬の開発を進めてきた。しかし、Pfizer社のSNX-5422、Novartis社のAUY-922、Astex社のAT13387の臨床治験の結果から、これらのHSP90阻害薬が網膜毒性を有することが明らかとなったが、その網膜毒性発現機構は現在まで解明されていない。本研究では、小型脊椎動物モデルであるゼブラフィッシュを用いて、HSP90阻害薬CH5164840の網膜毒性発現機構解析を実施した。ゼブラフィッシュは、ヒトと極めて類似した網膜を有している。また、体長が小さく、多数の個体を比較的小さなスペースで飼育することが可能であるだけでなく、毒性発現解析に使用する薬物の必要量が哺乳動物モデルに比べて非常に少ない。本研究では、受精後3日目から10日目までCH5164840を曝露したゼブラフィッシュにおいて、網膜視細胞層が変性することを明らかにした。また、ゼブラフィッシュ眼球を用いたトランスクリプトーム解析により、HSP90阻害薬の網膜毒性発現に関連する可能性のある分子を同定した。さらに、モルフォリノを用いたノックダウン実験により、HSP90阻害薬の網膜毒性発現におけるこれらの分子の関連性を検証した。その結果、HSP90阻害薬の網膜毒性発現機構の一端を解明することに成功したので報告する。