2013/07/22 |
ゼブラフィッシュを用いた新しい発達神経毒性評価システム
A novel system using zebrafish for the assessment of developmental neurotoxicity
西村有平1,2,3,4,5、島田康人1,2,3,4,5、田中利男1,2,3,4,5
1三重大学 大学院医学系研究科 薬理ゲノミクス
Department of Molecular and Cellular Pharmacology, Pharmacogenomics and Pharmacoinformatics, Mie University Graduate School of Medicine
2三重大学 メディカルゼブラフィッシュ研究センター
Mie University Medical Zebrafish Research Center
3三重大学 システムズ薬理学プロジェクト研究室
Department of Systems Pharmacology, Mie University Graduate School of Medicine
4三重大学 新産業創成研究拠点 オミックス医学研究室
Department of Omics Medicine, Mie University Industrial Technology Innovation Institute
5三重大学 生命科学研究支援センター バイオインフォマティクス
Department of Bioinformatics, Mie University Life Science Research Center
発達期の脳は成人脳に比べて化学物質に対する感受性が高く、化学物質の曝露が中枢性奇形や精神発達遅延、自閉症や注意欠陥多動性障害などと密接に関連することが示唆されている。このような化学物質の発達神経毒性を評価するため、経済開発協力機構(OECD)は2007年にラットを用いたガイドラインを制定した。しかし、このガイドラインを用いて1化合物を評価するためには、700 匹以上のラット、約1億円の費用と約1年の試験期間が必要である。一方、現代社会では10万種類を超える化学物質が使用されており、これらの化学物質の発達神経毒性を評価することが喫緊の課題となっている。この課題を解決するためには、化学物質の発達神経毒性を安価、短期間かつ定量的に評価できる代替試験法を開発する必要がある。ゼブラフィッシュはi) 飼育が容易、ii) 小型かつ多産、iii)化学物質の曝露が容易、iv) 発生が速い、v) 脊椎動物であり、中枢神経系におけるシグナル伝達機構や脳形成パターンが哺乳類との間でよく保存されている、などの特徴を有している。このようなゼブラフィッシュの利点を用いて、発達機における化学物質の曝露が神経系組織の形態や行動に与える影響をスクリーニングする手法が世界中で開発され、その有用性が認識されつつある。
我々は、ゼブラフィッシュの脳や網膜などの神経組織や、血液脳関門機能を可視化できる蛍光色素を開発してきた。また、皮膚が透明なゼブラフィッシュを創成し、これらの蛍光色素や、神経細胞特異的に蛍光タンパク質を発現するトランスジェニックゼブラフィッシュを用いた生体画像解析の高感度化に成功した。本シンポジウムでは、これらの蛍光色素や透明ゼブラフィッシュを用いた新しい発達神経毒性評価法について報告する。