2013/12/05 |
第36回日本分子生物学会年会(2013年12月5日、神戸国際会議場)にて下記の演題を発表する予定です。
新規ゼブラフィッシュ行動解析を用いた抗甲状腺薬の発達神経毒性評価
芦川芳史1、西村有平1,2,3,4,5、村上宗一郎1、梅本紀子1,2、川端美湖1、笹川翔太1、張貝貝1、島田康人1,2,3,4,5、田中利男1,2,3,4,5
1三重大・院・医・薬理ゲノミクス
2三重大・システムズ薬理学
3三重大・メディカルゼブラフィッシュ研究セ
4三重大・新産業創成研究拠・オミックス医学研
5三重大・生命科学研究支援セ・バイオインフォ
甲状腺ホルモンは神経系の発達に重要な役割を果たしており、妊娠中の甲状腺機能亢進症に対する過度の抗甲状腺薬投与や、ヨード摂取不足に伴う甲状腺ホルモン合成の低下が、胎児の発達や、出産後の子供の発育に様々な悪影響を及ぼすことが明らかにされている。特に、注意欠陥多動性障害(ADHD)や、学習障害、不安障害などの精神神経疾患の発症と密接に関連することが報告されている。しかしながら、甲状腺ホルモンの欠乏による発達神経毒性の詳細な分子機構に関しては不明な点が多く残されている。本研究では、ゼブラフィッシュの行動解析を用いて、抗甲状腺薬の発達神経毒性を評価した。具体的には、受精後8時間より96時間まで、抗甲状腺薬を様々な濃度でゼブラフィッシュに曝露した。受精後7日目に外表奇形を認めない最高濃度を決定し、その濃度から3倍希釈系列で曝露したゼブラフィッシュの行動を、光の明暗変化や、てんかん誘発薬曝露に対する運動量の変化を指標として定量的に解析した。さらに、抗甲状腺薬と甲状腺ホルモンを同時投与したゼブラフィッシュの行動解析も行った。その結果、抗甲状腺薬の発達神経毒性を簡便に評価することに成功した。本研究で開発した行動評価法は96穴プレートを用いて実施しており、様々な条件で抗甲状腺薬を曝露した96匹のゼブラフィッシュの行動を1度に解析することが可能である。したがって、抗甲状腺薬の種類、濃度、曝露時期に関する詳細な評価であり、抗甲状腺薬の発達神経毒性の詳細な分子機構解析に有用なツールとなりうる。