2014/02/15 |
第43回日本心脈管作動物質学会
新規腫瘍血管新生制御遺伝子ZMYND8の発見と臨床応用
○島田康人1)- 5)、黒柳淳哉1)、梅本紀子1),2)、張貝貝1)、西村有平1)- 5)、田中利男1)- 5)
1)三重大学大学院医学系研究科 薬理ゲノミクス分野
2)三重大学大学院医学系研究科 システムズ薬理学分野
3)三重大学メディカルゼブラフィッシュ研究センター
4)三重大学新産業創成研究拠点 オミックス医学研究室
5)三重大学生命科学研究支援センター バイオインフォマティクス
血管新生のメカニズムの解明に向けた基礎研究と技術などの進歩により、近年、固形癌において、VEGFあるいはその受容体などを阻害する中和抗体や低分子化合物が臨床応用され、画期的な治療法となっている。しかしその標的分子数は限られており、特に、腫瘍血管新生を特異的に阻害する、新たな創薬ターゲット分子の探索研究が活発に行われている。
これまでに我々は、血管内皮細胞特異的蛍光タンパク質を発現する色素欠損ゼブラフィッシュ系統の構築に成功し、血管組織の生体内(in vivo)イメージングを可能にしてきた。このゼブラフィッシュに対しヒト前立腺癌細胞(DU145)の移植を行い、in vivoにおける腫瘍血管新生などの病態変化を確認した。我々は、このゼブラフィッシュのトランスクリプトーム(DNAマイクロアレイ)解析とヒト臨床DNAマイクロアレイデータを用いたCross-Species Array Analysisの結果、新規腫瘍血管新生制御遺伝子、zinc finger, MYND-type containing 8 (ZMYND8)を発見したので報告する。In vitroおよびゼブラフィッシュを用いたin vivoの系でZMYND8の過剰発現・発現抑制が、腫瘍血管新生の制御していることを明らかにした。また本研究における、疾患モデルゼブラフィッシュ(フェノーム)、異種間トランスクリプトーム、ヒト培養細胞系の3つの新しい研究戦略が、創薬ターゲットディスカバリーの強力なツールとなることを証明した。