2022/07/02 |
Th 49th JSOT 第49回日本毒性学会学術年会シンポジウム
シンポジウム「次世代の実験動物として小型魚類(ゼブラフィッシュ・メダカ)の
可能性ー毒性研究の新たな役者」
2022年7月2日(土)9:00-11:30(学会三日目)
ゼブラフィッシュ心毒性試験からoncocardiologyへの展開
田中利男1,2、山田佳代子1,2、森葵泉1,2、澤田莉乃1,2、山本恭子1,2、水谷有香1,2、梅本紀子1、島田康人3、西村有平3
1三重大学大学院医学系研究科システムズ薬理学
2三重大学メディカルゼブラフィッシュ研究センター
3三重大学大学院医学系研究科統合薬理学
Oncocardiologyは、最近の新規抗がん剤の急激な種類の増加と、その結果認められる心毒性により、国際的な関心が集中してきました。そこで、心臓に異なる波長とゲノム挿入部位の蛍光蛋白トランスジェニック透明ゼブラフィッシュ2種(MieKomachi009, MieKomachi069)を用意して、数多くの抗がん剤による心臓蛍光動画変化の自動定量解析による新しい心毒性ハイコンテントスクリーニングシステムを確立しました。具体的には、受精1日後から抗がん剤に暴露し、受精4日後に自動動画撮影し、既に報告している方法により収縮期と拡張期における心室長径と心室短径を算出しました(Mol Biotechnol.2013 55:131-42)。その結果、sorafenibでは、収縮期心室短径および拡張期心室長径における減少が、既に明らかにしているように再確認されました(Toxicol Sci.2015 143:374-84)。さらにcisplatin, dasatinib, sunitinibなどにより拡張期心室長径の短縮が、nilotinibには伸長が認められました。これらsorafenib, cisplatin, dasatinib, nilotinib, sunitinibなどは、既に臨床的心毒性が報告されており、今回のゼブラフィッシュ心毒性スクリーニング結果との相関が、明らかになりました。一方、臨床における心毒性がほとんど認められないgefitinib, imatinibにおいては、ゼブラフィッシュ心機能障害が、認められませんでした。これらの結果から、今回開発したゼブラフィッシュ心毒性ハイコンテントスクリーニング法は、今後のoncocardiology研究に有用なツールとなりうることが示唆されました。