2010/11/19 |
○梅本紀子、西村有平、山中裕貴子、岸誠也、伊藤早紀、岡森加奈、島田康人、黒柳淳哉、張孜、田中利男
心疾患は様々な遺伝子発現変化によりその病態機構が形成されている。心疾患における病態遺伝子の分子機能を解明するために、我々はモルフォリノアンチセンスオリゴ(MO)を用いたゼブラフィッシュの定量的遺伝子ノックダウン法および蛍光心臓イメージ解析を用いた心機能解析法を開発した。さらに、これらの方法により心筋トロポニンT(cTnT)ノックダウンモデルを用いて、cTnT発現変化と心不全病態の相関を明らかにしたので報告する。
受精卵にcTnT-MOを注入すると、心不全重症度の異なる複数の表現型が出現する。はじめに我々は、cTnT-MOと蛍光標識したノンターゲットMOをゼブラフィッシュ受精卵へ共導入し、蛍光強度とcTnTの発現量の関係を調べると、蛍光強度とcTnT発現量は逆相関した。また、蛍光強度と心不全重症度は相関した。従って、2種類のMOを共導入し、個体の蛍光強度を測定することより、ノックダウン効率を定量することが可能となった。次に、ゼブラフィッシュを蛍光色素Bodipy-ceramideで染色することによる心臓イメージ解析を用いて、軽度cTnTノックダウンモデルにおける心機能解析を実施した。その結果、極微量なcTnT発現量の低下が誘導する僅かな心機能低下を検出した。従って、この方法を用いることにより、簡便かつ高精度に心機能低下を検出することが可能である。
心疾患における病態遺伝子の発現制御と、バイオイメージングによる心機能解析法は、その分子機能を解明する上で極めて重要である。我々が開発したゼブラフィッシュの定量的ノックダウン法及び心臓イメージ解析による心機能解析法はヒト心疾患の病態解明及び治療標的分子の探索研究に有用であることが明らかとなった。