2011/05/24 |
ゼブラフィッシュの行動を指標にした中枢神経作用薬の ハイスループットスクリーニング
○ 西村有平1,2,3,4)、今鉄男1)、梅本紀子1)、張孜1)、伊藤早紀1)、岡森加奈1)、
張貝貝1)、黒柳淳哉1)、 島田康人1,2,3,4)、田中利男1,2,3,4)
1)三重大学大学院医学系研究科薬理ゲノミクス、2)三重大学メディカルゼブラフィッシュ研究センター、3)三重大学ベンチャービジネスラボラトリー メディカルケモゲノミクス、
4)三重大学生命科学研究支援センター バイオインフォマティクス
近年の科学技術の発達により、アルツハイマー病や脳腫瘍など様々な中枢神経系疾患の分子機構が明らかにされつつある。疾患関連分子に対して選択的に作用する薬物は、 疾患特異性が高く副作用の少ない医薬品になる可能性が高いことが期待されるため、従来の創薬では、標的分子への薬理作用の強さを指標として薬物の開発が実施されてきた。しかし、開発された分子標的薬の中枢神経疾患治療薬としての有効性を検証するためには、モデル動物を用いた行動評価が不可欠である。従来、哺乳類モデル動物を用いて、数多くの有用な行動評価方法が開発され、中枢神経疾患治療薬の開発に多大な貢献を果たしてきた。しかし、哺乳類モデル動物を用いた行動評価は、時間や労力だけでなく、比較的多量の化合物を必要とする問題点を有している。また、従来のリバース創薬に加えて、オミックスを基盤としたフォワード創薬の必要性が示唆されている。そこで本研究では、小型脊椎動物であるゼブラフィッシュの行動評価を基盤とする中枢神経作用薬のハイスループットスクリーニング系の開発を試みた。受精後6日目のゼブラフィッシュを96 well plateの各wellに一匹ずつ配置して、中枢神経作用薬を24時間曝露後、新規環境/ストレス負荷時における行動変容、聴覚刺激に対する馴化反応(非連合学習)をビデオトラッキングシステムを用いてモニタリングし、行動解析ソフトウェアを用いて各行動を定量化した。この定量的行動プロファイリングにより、中枢神経作用薬のクラスタリングを行うことが可能であり、既知の中枢神経作用薬と同様の薬理作用を有する新規中枢神経作用薬の同定や、既知薬物の新規薬理作用を発見できる可能性が明らかとなったので報告する。