2021/07/09 |
ゼブラフィッシュ発生毒性試験における品質管理プロトコルの確立
田中利男1、2、小島肇3、藤原道夫4、森華奈子4、山本恭子1、2、山田佳代子1、2、水谷有香1、2、森葵泉1、2、加藤由起子1、2
1三重大学大学院医学系研究科システムズ薬理学
2三重大学メディカルゼブラフィッシュ研究センター
3国立医薬品食品衛生研究所安全性予測評価部
4アステラス製薬株式会社安全性研究所
2021年1月29日、医薬品規制調和国際会議(ICH)による医薬品の生殖発生毒性評価に係わるガイドライン(DETECTION OF REPRODUCTIVE AND DEVELOPMENTAL TOXICITY FOR HUMAN PHARMACEUTICAL S5(R3) )が医薬品医療機器総合機構(PMDA)により報告され、我が国でも本格的に代替法としてのゼブラフィッシュ発生毒性試験が展開されている。そこで、このゼブラフィッシュ発生毒性試験における最重要基盤であるゼブラフィッシュ品質管理プロトコルの確立を試みた。世界で最も頻用されているゼブラフィッシュABラインを、米国ZIRCから入手した。まず12、919個の受精卵を解析し、受精後3時間までに290個(2.3%)の受精卵が死亡した。この受精後3時間においてすでに2055個(16.3%)に形態異常が認められた。その後受精後24時間までに、4,646個(36%)が死亡することが明らかとなった。しかしながら、この受精後1日後から6日後までの生存率は、64%(1dpf)、61.3%(2dpf)、59.0%(6dpf)と、受精後24時間における急激な生存率低下に比較すると安定していることが認められた。一方、これら受精後3時間から6日後におけるタイムラプスイメージングを実施した結果、受精後3時間における受精卵異常イメージングにより、少なくとも受精後24時間までの急激な死亡を予測できることが明らかとなり、受精後24時間までの死亡予測能を強化するための診断基準を確立した。その結果、発生毒性試験のための化合物暴露開始(6hpf)前に、これらの低品質受精卵を除去することが可能となり、偽陽性頻度を抑制し、ゼブラフィッシュ発生毒性試験の精度を強化することが実現できたので、報告する。