| 2026/06/19 |
患者がん移植ゼブラフィッシュシステム(PDXZ)による
創薬スクリーニングと臨床治験応用
◯田中 利男1,2、篠木加奈1,2、清水陽嘉1,2、森葵泉1,2、西野加奈子1,2、
松岡さおり1,2、里田有希1,2
1三重大学大学院医学系研究科システムズ薬理学、
2三重大学メディカルゼブラフィッシュ研究センター
1.がん治療薬開発は現在まで、「臨床での再現性(Translatability)」の壁に直面しています。in vitro臨床がん細胞(Organoidなど)で効果があっても、ヒトでの臨床試験(Phase II/III)で失敗するーこの高い開発中止率(Attrition rate)の主因は、「スクリーニングに用いるシステムが、ヒトの臨床治療予後を反映していないこと」にありました。その壁を、最近国際的に臨床試験で証明された予測精度を持つ患者がん移植ゼブラフィッシュシステム(PDXZ)が突破しています。
2.PDXZシステム最大の特徴は、単なる実験モデルではなく、臨床治療予後を正確に予測する診断システムとして既に機能している点です。(1)Prospectiveな証明: 近年の臨床試験メタ解析において、実際の患者治療予後との一致率(Concordance Rate)は 87?91% に達しました 1) 2) 3) 4)。(2)Retrospective Evidence 1)乳がん18例でのPDXZの治療予測精度100% 5) 2)大腸がん55例でのPDXZ治療予測精度91% 1) 3)肺がん13例でのPDXZ治療予測精度77% 6) (3)圧倒的な陰性的中率: 「このモデルで効かない薬は、ヒトでも効かない」という予測精度は 95%以上。効かない候補を確実に排除するフィルターとして機能しています1) 2)。
3. なぜ、臨床エビデンスが「創薬」を劇的に変えるのか?
従来の創薬スクリーニングは、「生物学的な活性があるか」を見るものでした。しかし、PDXZによるスクリーニングは、「臨床で効くか(Clinical Efficacy)」を最初から見に行きます。
すでに実際の患者データとの相関(正解率約90%)が取れているモデルを使ってリード化合物を探索・選抜するため、「実験室では効いたが、臨床では効かなかった」という乖離(魔の川・死の谷)を、開発の最初期段階で埋めることができます。
• ヒト臨床試験の「リハーサル」: 超小型の第II相臨床試験
PDXZでのスクリーニングは、実質的に「超小型の第II相臨床試験」を数千化合物に対して行っているのと同義です。ここで生き残った化合物は、マウスや細胞だけで選ばれた化合物よりも、臨床試験を突破する確率(成功期待値)が桁違いに高まります。
4. PDXZソリューション:3つの革新
? 創薬スクリーニングの「質」と「速さ」の同時実現 (High-Quality Drug Discovery)
•臨床直結型スクリーニング: 上記の通り、高い臨床予測能を持つモデルを用いることで、開発後期での失敗リスクを劇的に低減します。
•多角的な評価: わずか1週間で 、腫瘍縮小だけでなく、血管新生阻害、転移抑制、腫瘍微小環境(TME)への作用など、in vitroでは見えない複雑な薬効メカニズムを可視化します。
? 臨床治験のデザイン革新 (Clinical Development Optimization)
•コ・クリニカル試験による層別化: 治験開始と同時にPDXZ解析を行うことで、その薬に反応する「レスポンダー(Responder)」の特徴を特定。治験参加者の層別化(Stratification)を支援し、第II相/第III相試験の有意差検定の成功率を最大化します。
? 真の個別化医療の実装 (Precision Medicine)
•ラストワンマイルの診断: ゲノム情報だけでは治療薬が決まらない難治性・進行性・希少がんに対し、既存薬の中から「機能的に効く一本」を提示。標準治療のその先を照らす技術として実装します。
「生体内で、速く、正確に」——それはもはや仮説ではない。臨床データという裏付けのないモデルでのスクリーニングは、羅針盤のない航海と同じです。確かなエビデンス(臨床予測精度90%)に裏打ちされたPDXZプラットフォームこそが、創薬プロジェクトを「偶然の発見」から「必然の成功」へと導きます。そこで、我々はPDXZ1.0 (2014) プロトコルをAI品質管理強化することにより、さらにスループットや精度を改善しました下記PDXZ2.0 (2026) プロトコルを、開発しましたので、ご報告いたします。
1)Costa et al. (2024) Nature Communications 15(1):4771
2)Usai et al. (2021) Cancers 13(16):4131
3)Ali et al. (2022) Journal of Experimental & Clinical Cancer Research 41:58
4)Sugino et al. (2025) Cancer Sci.116 (12): 3376-3387
5)Mendes et al. (2025) NPJ Precis Oncol. 9(1):94
6)Hua et al. (2022) Exp Biol Med (Maywood) 248(4) : 361-369