2011/07/12 |
ゼブラフィッシュを用いた新しい発達神経毒性評価法の開発
Creation of a novel system using zebrafish for the assessment of developmental neurotoxicity
西村有平1,2,3,4、竹内慎一 1、三澤知子 1、今鉄男 1、岸誠也1、梅本紀子1、張孜1、伊藤早紀1、岡森加奈1、黒柳淳哉1、島田康人1,2,3,4、田中利男1,2,3,4
1三重大学大学院医学系研究科 薬理ゲノミクス
Department of Molecular and Cellular Pharmacology, Pharmacogenomics and Pharmacoinformatics, Mie University Graduate School of Medicine
2三重大学メディカルゼブラフィッシュ研究センター
Mie University Medical Zebrafish Research Center
3三重大学新産業創成研究拠点 オミックス医学研究室
Department of Omics Medicine, Mie University Industrial Technology Innovation Institute
4三重大学生命科学研究支援センター バイオインフォマティクス
Department of Bioinformatics, Mie University Life Science Research Center
発達期の脳は成人脳に比べて化学物質に対する感受性が高く、化学物質の暴露が中枢性奇形や、精神発達遅延などと密接に関連することが明らかにされている。 このような化学物質の発達神経毒性を評価するため、経済開発協力機構は2007年にガイドラインを制定し、ラットやマウスなどの哺乳動物を多数用いて、詳細な発達神経毒性試験を実施することを推奨している。しかし、現在世界中で製造されている10万種類以上の化学物質に対して、哺乳類を用いた大規模かつ詳細な毒性試験を実施することは、費用、時間、労力、倫理面などで多くの困難を伴う。したがって、哺乳動物に代わるモデル動物を用いて、高精度、高速、安価な発達神経毒性スクリーニング試験法を開発することは、多数の化学物質の発達神経毒性評価を実現可能にし、安全な社会の構築に貢献しうる重要な研究課題である。本研究では、哺乳類を用いた試験法を補完しうる有用なモデル動物としての地位が確立しつつあるゼブラフィッシュを用いて、新しい発達神経毒性試験法を開発した。具体的には、ゼブラフィッシュ神経系を可視化する新規蛍光色素(BMC Neuroscience 2010, 11, 116)や、トランスジェニック技術を用いたin vivoイメージングによる形態評価と、ビデオトラッキングシステムを用いた行動解析法を確立した。これらの評価法は、96wellプレートを用いて実施するため、多くの検体を高速に解析することが可能である。本研究で開発した発達神経毒性評価法は、多数の化学物質の評価や、化学物質の発達神経毒性の用量相関性の解析を容易にするだけでなく、哺乳類を用いた毒性試験の削減にも貢献しうると考えられる。本研究は日本化学工業協会が推進するLRIにより支援された。